間質性膀胱炎
一般に「膀胱炎」と言えば大腸菌に代表される細菌によって引き起こされる膀胱粘膜の炎症で、頻尿(頻回に尿意を催す)、残尿感、排尿痛を訴えますが、菌に感受性を有する抗生物質を用いると速やかに症状が改善する病態です。
一方、間質性膀胱炎(以前はアレルギー性膀胱炎と呼ばれたこともある)と言うあまり聞きなれない膀胱炎があります。強い排尿痛があり、著しい頻尿を呈し、一日50回以上の排尿をするケースもあります。経過が大変長く、治りにくく、多くの病院や医院を訪れる症例も少なくありません。当初の診断名も明確でなく、神経性頻尿とか精神的な問題と捉えられるらこともあり、また膀胱鏡検査(内視鏡検査)で膀胱癌と似た所見(出血巣)を呈することもあり、膀胱癌疑いと見られることもあります。
いずれにしても医療者サイドより見ても、まだ原因が明らかでなく診断基準も確立されていない部分もあり、消去法でしか診断できない場合もあります。そのため、患者さんへの説明も難しく明解にできないことも多々あります。
しかし、最近少しづつですがその本態が明らかになりつつあります。
当初、細菌性膀胱炎やウィルス、また他の微生物、或いは化学物質などで膀胱の粘膜が損傷され、それを修復しようとする機序が働き出します。(この機序は大変複雑で、専門家の間でも意見は統一されていない)。しかし、これが、少し誤った方向へ行ってしまうか、修復作業が終了しないでいつまでも続いているなどの状況が考えられ、知覚神経の異常も重なって、膀胱粘膜及び粘膜下で頑固な炎症が続いている状況と考えられつつあります。膀胱容量は小さくなり、1回排尿量は20~30mlとなることもあります。痛みが強くpainfull bladder(痛い痛い膀胱)と米国では呼ばれています。
治療法も少し確立されてきました。麻酔をかけ痛みを無くした状態で膀胱内へ水を沢山入れ、水圧で膀胱を拡張し、膀胱容量を大きくする方法がまず試みられます。また局所麻酔剤やステロイドホルモン(副腎皮質ホルモン)、抗生物質などを混合して膀胱内へ注入する方法、抗アレルギー剤の内服など試みられています。
これまでは病気の本態が不明で、診断できないこともあり、放置されていた状況から、徐々に手掛かりが明らかにされてきました。このような症状で困っている方がありましたら専門医にご相談ください。