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膀胱下垂

膀胱下垂について述べます。

胃下垂や腎下垂は体格、体系、筋肉の付きかたなどにより女性に多いのですが、男性にも見られます。しかし膀胱下垂は男性にはみられず女性の病態です。


これはお産をするための解剖学的形態の男女差によるものです。すなわち、お産の時に赤ちゃんが産道(膣)を通ってくるのですが、この目的のため女性の骨盤底は伸びることが必要となります。そのため靭帯なども男性ほど密でなくやや粗になっています。

数回のお産(1回でも赤ちゃんが大きい場合は特に)や、加齢(更年期を過ぎると特に)、肥満などの理由により骨盤底の筋肉が撓んで膀胱膣、場合によっては子宮や肛門も下降してきます。このような状況になりますと初期では頻尿、下腹部の不快感、残尿感などがみられます。細菌性膀胱炎の症状と一部似ているのですが膿尿(尿に白血球が混ざる)がないのが特徴で、当然のことですが抗生物質は無効となります。もう少し症状が進むと腹圧性尿失禁(くしゃみや咳などで尿が漏れる)がみられるようになります。

形態学的な変化を伴うことも多く、前膣壁が伸びると膀胱が後下方に下垂がひどくなり、排尿困難や尿失禁が増悪することになります。この状況が高度になりますと外陰にボール状に膣が突出したかたちとなり膀胱瘤と呼ばれます。後膣壁が伸びると直腸が前下方に下垂がひどくなり頑固な便秘や頻便、特に失便につながることがあります。

これも高度になりますと膀胱瘤と似た状態となり直腸瘤と呼ばれます。子宮の極度の下垂で膣口より子宮が逸脱することもあります。この時は膀胱も供に引っぱられて下垂し、常に尿失禁の状態になります。この場合、腎臓より膀胱に尿を運ぶ尿管が引っぱられて通過が悪くなるので腎臓が腫れる(水腎症)ことも少なくありません。

治療は程度や下垂する方向によって異なりますが、初期及び予防としては肛門括約筋(おしりの穴)を閉める体操(骨盤底筋体操)を行うことが効果的です。下肢や腹部の筋肉には力を入れず、肛門だけを閉めることが大切で、5~10秒間閉めて休むをくりかえします。1日50回以上(連続しては無理で10回を5クール、5回を10クールも可)行うことが重要です。色々の報告によればこの体操を6ケ月以上続けるだけで30%は尿失禁が消失しています。

病態が進むと体操だけでは無理で薬物の内服や手術が必要となります。以前はあまり有効な治療手段がなかったのですが最近は色々な方法があります。

デパートや病院で健康で働いている20~60才の女性に対する複数のアンケート調査で、なんと30%の方に尿失禁があると報告されています。

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