本日は前立腺がんの治療について述べたいと思います。

直腸指診、経直腸前立腺エコー検査、前立腺特異抗原(PSA)の所見で前立腺がんが疑われ、前立腺針生検で病理学的検査で前立腺がんの診断が確定します。この場合、がん病巣の進展度、年齢、本人の希望などにより治療の方針が決定されていきます。

その目安について原則論を述べますと、がん病巣が前立腺内に限局している場合、外科的に前立腺全剔出術が可能です。下腹部にメスを加え、腹部を切開して前立腺及び精のう腺全体を切除します。この術式も色々の工夫がなされ、最近は安全に行えるようになってきました。

時に術後に腹圧性尿失禁を認めることもありますが、その確率も低下してきています。施設によっては腹腔鏡下で前立腺全剔を行っているところもあります。前立腺全剔の後はリンパ節などへの転移がなければ再発の心配はなくなります。症例の多くは術後の内服治療も不要になります。

一方、病巣が前立腺外へ進展している場合はホルモン治療がすすめられます。病態生理学的に前立腺がん細胞の勢いは男性ホルモンの存在下に保たれるようになっています。したがって男性ホルモンを低下させるようにする必要があり、外科的に睾丸を剔出して、女性ホルモン剤を使用する方法が昭和55年頃までは一般的でした。

その後睾丸を剔出しなくても1ヶ月に1回注射する方法で男性ホルモンの分泌を抑制する方法が行われるようになり、入院してメスを加えなくても外来レベルでホルモン療法が行えるようになってきました。前立腺がんは放射線に感受性があり、ホルモン療法以外に放射線療法があります。この方法も照射方法の工夫や照射線の種類の発見などで効果及び副作用の軽減にかなりの進歩がありました。前立腺に2方向~3方向より少量の線量を照射して前立腺で焦点を結ぶようにしますと安全性が高く、効果を高めることができます。

前立腺全剔出術、ホルモン療法、放射線療法などをがん病巣の進展度、時にはがん細胞の悪性度、患者さんの年齢及び合併症などの要素、更には十分な説明を受けたうえで患者さんの希望にそった治療方法の組合せが可能となってきました。がんの発見、予防については未だ明確にはなっていませんので、まず、毎年の健診でチェックを受け、心配ないことを確かめるとともに、もし異常があるならば精密検査を受け早期発見につとめたいものです。