本日は脊髄損傷と排尿障害について述べます。

手足は脳及び脊髄からの神経によって支配されています。これと同じように膀胱(排尿機能、蓄尿機能)も神経によって支配されています(図)。

まず腰部交感神経核に連絡する下腹神経は膀胱出口部の緊張の増減をしたり、膀胱の痛みを伝えたりします。また陰部神経核に連絡する陰部神経は尿道括約筋の開閉を行ったり、尿道の知覚を伝えたりします。更に骨盤神経核に連絡する骨盤神経は膀胱排尿筋の収縮を行ったり、尿意を伝えたりします。

脳幹排尿中枢は自律神経の中枢に属し、腰部交感神経核、陰部神経核、骨盤神経核を統合的に支配します。大脳皮質排尿中枢は更に上位より脳幹排尿中枢をコントロールします。生まれて2才位までの赤ちゃんは脳幹排尿中枢(自律神経中枢)のレベルで排尿がコントロールされています。3才を超えて尿意を感じ、これをコントロールできるようになるのは、大脳皮質排尿中枢が十分に機能してきてからです。

さて、このように正常に機能している神経が脊髄のレベルで損傷されますと(波線の部分)、膀胱尿道からの知覚信号が脳に伝わりません。また脳からの指令も膀胱排尿筋や尿道括約筋に伝わりません。したがって膀胱は正常な蓄尿や排尿ができなくなってしまいます。蓄尿機能が障害されますと尿失禁(尿が漏れる)が見られます。また排尿機能が障害されますと膀胱内に尿が過度に溜り、その上に位置する腎臓から尿が下降しにくくなり、腎臓が腫れて機能が低下します。さらに、尿の流れがスムーズでなければ、菌が繁殖し熱を出すようになります。いわゆる尿路感染症(腎盂腎炎)が反復することになります。このようになりますと結果的に腎不全(尿毒症)に繋がる可能性があります。

昭和40年頃までは脊髄損傷者の死因の第1位は腎不全でしたが、その後研究が進み、治療法も改善されました。現在では導尿法(時間的に尿道口より管を膀胱まで挿入し、尿をすべて排出する。そしてその管をその毎に抜去する。通常は1日5~8回程度行う。)が治療法の第1選択となっています。

四肢の麻痺と違って内蔵(膀胱や直腸)の麻痺は外観的にはわかりません。しかし生命予後を左右するほど大切なものです。